シーリング上の塗膜が割れる要因と対策

今回は、「シーリング上の塗膜はなぜ割れることがあるのか?」
そして、「シーリング上の塗膜を割れにくくするための有効的な対策は?」
を検証します。

まずは検証するにあたり、戸建ての外壁サイディング目地を想定して、
サイディングの目地を幅10mm、厚み14mmにて作成。
目地に3種類のシーリング材を充填し乾燥後、各検体のシール上に塗装します。

外壁サイディングには一般的に水性塗料を塗るのが主流ですが、今回は「シーリング上の塗膜割れ」の検証ですので、より割れやすいと思われる弱溶剤塗料を塗装することにしました。

使用したシーリング材は、
・「ドライサラ」(シャープ化学工業)
・「オートンイクシード」(オート化学工業)
・「MSシーラントNBプレミアム」(東郊産業)

使用した塗料は、
・2液型弱溶剤シリコン樹脂塗料「ハイパーユメロック」(ロックペイント)
・2液型弱溶剤無機塗料「ハイパーリアクターコート無機」(ロックペイント)

30パターンの検体を作成し、2025年2月18日に屋外曝露開始しました。
1年と7ヶ月程度経過したので、
塗膜割れした検体の確認と、なぜ割れたのかを様々な観点から推察します。

概要
シール打設2025年 2月9日
塗装までのインターバルは4日間(一部インターバル差の検証は除く)置いて、
2025年2月13日 塗装
下塗りはロックの2液型弱溶剤 ハイパーシーラーエポを使用。シーラー塗布のものは、翌日に上塗り塗装。

設置日 2025年2月↓
シーリング打設の上塗装した検体の設置2025.2
(↑図1)

2026年9月現在↓
シーリング打設の上塗装した検体の現状2026.9
(↑図2)

シール上塗膜が割れる要因を考えてみると、
①硬い塗料を選定した。(無機塗料)
②環境(振動や外気温、水分による躯体の伸縮膨張等)
③シーリングの乾燥不足
④シーリング材と塗料の相性
大きくはこの4つではないでしょうか。

まずは、①無機塗料を塗装すると割れやすいのか?
赤⭕️が塗膜が割れている箇所です。
暴露後の検体の様子1

暴露後の検体の様子2
(↑図3.4)

上塗りがハイパーユメロックの場合は、わずかに割れている検体がありました。
ハイパーリアクターコート無機は肉眼でハッキリ分かる程に割れている検体があります。
シリコン塗料と無機塗料を比較した場合は無機塗料の方が割れやすいということになります。

とはいえ、無機塗料で塗装した検体が全て著しく割れているのかというと、そうでもないようです。

また、弾性硬化剤を使用することで割れの抑制に一定の効果があることも分かりました。

図3.4を一見するとオートンだけ塗膜割れがみられず、これはシーリング材によって塗膜の割れ易さが異なるのか?と感じました。
しかし詳しくは後述しますが、恐らくこの結果は塗膜の膜厚の差によるものと考えられます。
個人的にはシーリングの柔らかさそのものが塗膜割れに起因するとは考えにくいと思っています。(ブリードやシールそのものの破断は別問題)

次に②環境の影響ですが、今回の検証をするにあたり同じ検体を2組づつ作成し、1つは屋外曝露、もう1つは室内にて保管してあります。

室内保管の検体
(↑図5)

検体数が多いので画像は割愛しますが、室内保管の検体は全て上記画像のように塗膜の割れは見られず、1年7ヶ月経過してもとても良い状態なのです。

つまり、屋外の振動や水分等の外的要因はシーリング上の塗膜割れに影響しているということになります。

③のシーリングの乾燥不足ですが、
シーリング充填後、インターバルを24h~10日まで間隔を空けて塗装した検体です。

「リアクターコート無機」を塗布したシーリング

「ハイパーユメロック」を塗布したシーリング
(↑図6.7)

通常硬化剤、弾性硬化剤どちらも塗膜は割れておらず、無機塗料でも全て割れませんでした。
図4ではドライサラが割れていましたが、インターバル検証では全てのシールをドライサラで充填していますが割れていないので、シーリング(ドライサラ)との相性が悪いわけではないようです。
今回の検証では、シーリングの乾燥不足での塗膜割れは見られませんでした。

次に、塗り回数による検証です。
下の画像のように、上から上塗り1~3回塗りをして、膜厚による割れへの影響を観察しました。

シール上の塗装の塗り回数による違い
(↑図8)

シール上の塗装/下塗りした場合の結果

シール上の塗装/下塗り無しの場合の結果
(↑図9.10)

同一検体の同一目地にも関わらず、上塗り1回の部分だけ割れています。

全体的にみると実は、塗膜が割れてしまったものは「ハイパーシーラーエポ」を塗布した検体だけで、「シーラーなし」は全て割れていません。

どうやらシーリングの上に弱溶剤2液型エポキシシーラーを塗布すると上塗り塗膜は著しく割れやすくなる傾向があります。

加えて、塗り回数による検証結果からみると「膜厚」もシーリング上の塗膜割れに大きく起因していると考えられます。

今回の実験結果に基づいて、塗膜が割れる要因をまとめ直してみると、
・シーリング上にエポキシ系の下塗りを塗布した
・上塗りの膜厚が薄かった
主にこの2点となります。

最初に書いた①の検証では、わずかに無機塗料の方が割れやすい結果となりましたが、こちらの動画をご覧ください。

どちらの検体も上塗りに無機塗料を塗布してありますが、検体を湾曲させた時に塗膜が割れるのは、ハイパーシーラーエポを塗布した検体だけでした。
下塗りを塗布しなければ無機塗料にも「ある程度の追従性」があるようです。

ネットで調べてみると、「シーリングの上に無機塗料を塗るのは避けるべき」というのはよく見かけますが、「シーリングの上に下塗りを塗布するべきではない」というのはあまり見たことがありません。

一般的な塗装作業の順序は十中八九、高圧洗浄→シーリング→乾燥→塗装という流れなので、ほとんどのケースでシーリング上にも下塗は塗布されているのではないでしょうか。
もしかすると、本当に割れる要因となっているのは「無機塗料」ではなく、「下塗り塗料」かも知れません。

今回は弱溶剤のエポキシシーラーでしたが、これが現在主流である水性カチオンシーラーだとどうなるのか?は非常に興味があります。

万が一にも水性カチオンシーラーでも割れの要因となるのであれば、シーリング→塗装という順序そのものを見直す必要があるかも知れませんね。
シーリングの上に下塗り無しで上塗りが密着する前提ではありますけど。

これを読んでくださっているあなたなら、
仮に「シーリング上に下塗りを付着させないように塗る」としたら、どんな方法が思いつきますか?

こんなやり方したら効率いいんじゃない?等ありましたら、日本塗装技術研究会のインスタにコメントくだされば参考になります。

膜厚によって割れ易さが異なるのであれば、何μm以下だと塗膜は割れやすく、何μm以上あれば割れにくいのか?
実際に塗膜が割れてしまった1回塗り部分と、シーラー有りでも割れなかった2回塗り部分の膜厚を顕微鏡を用いて測定してみました。

室内保管してある検体を1つ犠牲にして、シーリングを切り取ります。
シーラーの塗装してある検体なので、切り取る際に力を加えると簡単にパキパキと塗膜が割れてしまいます…
シーラー恐るべし。

検体からシーリング部分を切除
(↑図11)

上塗り回数が異なる部分ごとにカットして、
塗り回数ごとに切除
(↑図12)

厚みがあると顕微鏡で観察できないので、さらに小さく細くカット。

顕微鏡によるシーリング断面観察のためさらにカット
(↑図13)

断面の赤丸部分を拡大してみます。
シーリングの上の塗装を顕微鏡で拡大
(↑図14)

この検体は上塗り1回塗りです。
1回塗りで膜厚がどの程度付いているのか測定したいのですが、下地がシーリングなので所持している膜厚計では測定出来ません。
そこで、数値が大きくは変動しないであろう下塗りの厚みから割り出してみます。

手元にあるステンレスの素地の膜厚が13μm。
膜厚計でステンレス板を計測
(↑図15)

このステンレスにハイパーシーラーエポを塗布すると、
膜厚計でシーラーを塗布したステンレス板を計測
(↑図16)

23μmに増加したので、ハイパーシーラーエポの膜厚は約10μm。これを基準にします。
計算し易いように、PCの画像に目盛りを当ててシーラーが10mmに合うように画像を拡大します。
顕微鏡画像を拡大
(↑図17)

これで画像上は1mm≒1μmになりました。
目盛りを見る限り上塗りの膜厚は約32μmくらいでしょうか。大体ですけど。
シーリング上の塗膜が下塗り上塗り合計約42μmの場合は塗膜は割れやすいという結果でした。

次は上塗りを2回塗装した検体。
シール上の3層の塗装断面の顕微鏡画像
(図↑18)

塗装断面の顕微鏡画像から各工程の膜厚を測る
(図↑19)

先程と同じく下塗りを10μmだと仮定すると、
今度の画像は、5mm≒10μmですから、
上塗り1回目が約15mm厚なので約30μm
上塗り2回目が約13mm厚なので約26μm
3層合計が66μm程度。
上塗りが56μmになると塗膜は割れませんでした。

確信は持てませんが、「シーリング上の塗膜は膜厚が薄いと割れやすくなる」傾向があります。
シーリング上だけでも捨て塗りをして上塗りを3回塗る等の対策をすれば多少なりとも割れの抑制に繋がるかもしれませんね。

今回はシーリング上の塗膜割れについて触れてみました。
少しでも参考になりましたら幸いです。


.記事提出者:丸信塗装

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