塩ビパイプ(PVC)への塗料密着試験

今回試験を行ったPVC(ポリ塩化ビニル・Poly Vinyl Chloride)とは、塩化ビニルモノマーを重合して作られる合成樹脂(プラスチック)の一種です。
以下は、PVCの特徴や用途についての説明です。

特徴
1. 耐久性: PVCは非常に耐久性が高く、化学薬品や腐食に対する耐性があります。
2. 柔軟性と硬さ: 添加物の量により、柔らかいPVC(フレキシブルPVC)と硬いPVC(硬質PVC)に調整できます。
3. 断熱性と難燃性: 電気の絶縁性があり、燃えにくい性質を持っています。
4. コスト: 製造コストが比較的低いため、多くの産業で利用されています。

用途
• 建築資材: パイプ、窓枠、床材などに広く使用されています。特に耐久性や防水性が求められる場所でよく使われます。
• 医療機器: 血液バッグやチューブなど、医療現場で重要な役割を果たしています。
• 電気絶縁材: 電線の被覆材として使用され、電気的な安全を確保します。
• 消費財: 玩具、文具、レインコートなどの日常生活品にも広く用いられています。

上記にもありますが、このPVC管は住宅のさまざまな用途のパイプや工場の排水管などに使用されており、主に美観目的での塗装をする場合があります。
その際に下処理を行わなかったり、適切な塗料を使用していない場合など以前は剥離してしまう恐れがあります。



今回は2種類の下塗り塗料を用いて、目粗し(表面下地処理)をしてある場合、していない場合に分け合計4検体の密着比較を行いました。

使用塗料はどちらも下塗りに使われる同一メーカーのエポキシ樹脂塗料①と②です。

検体を目粗しをします。

検体をシンナーで脱脂をします。

このように艶があると基本的に密着は悪くなります。

目粗しをする事により表面に細かく傷がつき艶をおとします。

目粗しをしている検体(←)としていない検体(→)を並べるとよくわかります。

各検体を吊るしスプレーで塗装していきます。

芯までしっかり乾かすため1週間放置しました。今回の塗装は完了です。

1週間後

検体のクロスカットを簡易でおこないます。
(※JIS密着試験で用いられる方法では通常は間隔なども定まっています)

その上でテープ(今回は引力もそこそこ強いパイオランテープ)を使用し密着をみていきます。


下記のような結果となりました。

下塗り塗料①目粗しなし↓

下塗り塗料①目粗しあり↓

下塗り塗料②目粗しなし↓

下塗り塗料②目粗しあり↓

上記の通り今回の場合は下塗り塗料①と②の比較では下塗り塗料②の方が密着性に優れており、目粗しの有無の比較では目粗しをしてある方が密着に優れている結果となりました。

この事からPVC(ポリ塩化ビニル)に塗装を行う際には、特有の注意点があります。
以下に、PVC塗装の際に考慮すべきポイントをまとめました。

1. 表面処理(目粗し)
PVCの表面は非常に滑らかな場合もあり、塗料が密着しにくいため、塗装前に目粗しを行うことが重要です。
サンドペーパーなどで表面を軽く荒らしておくと、塗料の密着性が向上します。

2. 適切な塗料、プライマーの使用
上記以外にもPVCは可塑剤も含んでおり、基本的には塗料が直接接着しにくい素材なので、適切なプライマー(下塗り剤)を使用するか、適切な上塗り塗料を使用する必要があります。(プライマーを使用しない場合)上塗り塗料や、下塗り塗料が適しているかどうかを事前に確認し、テスト塗装を行うと安全です。

3.脱脂処理
PVCの表面に油分や汚れが残っていると、塗料が均一に塗布できず、剥がれやすくなります。塗装前にアルコールや専用のクリーナーでしっかりと脱脂を行い、清潔な状態にすることが重要です。


おわりに
以上、結果を見て頂くとわかりますが、目視の状態では密着しているように見えます。
これは住宅などのいろいろな素材やそれを塗る場合に使われる塗料に対しても言える事です。
実際には、気付いていないだけで密着していない事があります。
その場合は剥離の恐れや次回塗装時の不具合原因にもなり、余分な手間・費用がかかってしまう事があります。
そうならないよう密着テストしていく事や塗装をする箇所への入念な目粗し(下処理)は大切な工程です。


記事提出者:有限会社 井口塗料

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