「このシーリングを使ったら
塗装しても大丈夫なのは何時間後なのか?」
比較するためのテストです。
22種類のシーリング材を打設後、12時間ごとに6回、72時間目まで塗装して検証しました。
建物に使用されるシーリング材には数多くの種類があり、用途によって使い分けます。
そのうち、外壁がサイディングやALCの住宅で主に使用されるのは、「変成シリコン」か「ウレタン」がほとんどと言っていいでしょう。
2023年に岐阜県で比較的大規模な曝露試験を開始するにあたり、塗料だけではなく、主に使用されているシーリング材も対象としました。
今回お伝えするレポートは、耐候性をテストする「曝露試験」ではなく、シーリングの打設後、72時間目(3日目)まで、12時間ごとに6回塗装して、96時間経過後(4日目)に塗膜の状態を撮影したものになります。
シーリングはものによって硬化時間にかなりの差があり、数時間である程度まで硬化するものもあれば、表面が硬化するだけでも数日要するものもあります。
シーリングの硬化が遅いと塗膜が割れてしまうことは知られていますから、どの程度の差があるのか、比較してみました。
■3月27日撮影
厚さ14mmの平らなサイディングと下地にする木材が届きました。
大工さんに架台の作成を依頼。
■4月1日撮影
サイディング屋さんにボードの切断と架台への取り付けをお願いしました。
29本の目地を作りますので板は30枚です。
板間に入れる「ハットジョイナー」です。
巾は10mm,高さは5mmのものを選択。
過日大工さんに作っていただいた架台に
サイディングを釘打ちで固定していきます。
巾10mm、深さ9mmの目地が29本出来ました。
■4月15日撮影
今回テストに使用するシーリング材です。
プライマーも各社指定のものを用意しました。
マスキングテープを貼ってプライマーを塗布。
夜7時頃、すべてのシーリングの打設が終了しました。
■4月16日撮影
打設翌日の朝7時、1回目「12時間目」の塗装です。
12時間目を塗り終えた状態です。
このあと、12時間ごとに72時間目までこの巾で塗っていきます。
■4月19日撮影
すべて塗り終えた翌日です。
ここまでを時系列をまとめると下記のようになります。
打設終了:4月15日19時
12時間目塗装:4月16日7時
24時間目塗装:4月16日19時
36時間目塗装:4月17日7時
48時間目塗装:4月17日19時
60時間目塗装:4月18日7時
72時間目塗装:4月18日19時
各シーリングの何時間目の写真なのか、
個別に写真撮影する前にマジックで書き込みました。
22種類のシーリングを使用し
29本の目地を打設した6回分の結果写真です。
174枚あります。
写真が多すぎて1枚の画像にできなかったので
1番から15番までと
16番から29番までの
2枚にまとめたものが下記です。
以上、パッと見ただけだと同じような多数の写真を
原寸のまま漠然と眺めてみても、なんだかよくわからないので,
各シーリング材の6枚の写真を1枚に合成することにしました。
上の要領で174枚の写真を29枚にまとめましたが、
29本の目地のうち、同じものを7本の目地に打設しましたので、
全22種で、22枚、下記に掲載します。
さらに、異常が認められないものは「○」、
塗膜にひび割れが生じているものは「×」を付けてあります。
「×」の中にはあまり目立たない微細なひび割れもありますが、
少しでも割れていたら「×」にしてあります。
それから、検体番号、分類、の後ろの記号は以下の意味があります。
「M」モジュラスによる分類
HM:高モジュラス MM:中モジュラス LM:低モジュラス
「NB」被塗装対応(ノンブリード)か否か
NB:ノンブリードタイプ ○または×
応力緩和型(サイディング対応品)か否か
SD:○または×
一般的に塗膜はシーリングより固いため、シーリングの上の塗膜が割れてしまうのは当たり前です。
しかし、それでもシーリングの上に塗装することによって、シーリングの延命に大きく寄与するため、改修工事では後打ちよりも先打ちすることが多いです。
建物の動きやシーリングの痩せなどによりその上の塗膜はいずれ割れることがあるとしても、なるべく割れないようにするためには、各シーリング材に見合った十分な硬化時間の後に塗装することが重要です。
当会では、シーリングについて今回のレポートのテストのほかにも、打設後に痩せにくいシーリングはどれか?、 露出で暴露した時に傷みにくいシーリングはどれか?、といったことについて、数年後に明らかになる曝露試験を行っています。
今回テストしたシーリング材の一覧表 (検体番号の順番ではありません)
メーカー 商品名 |
分類 | モジュラス | NB | 応力緩和 (SD適用) |
色数 | 荷姿 | その他 |
オート化学工業 「オートン サイディングシーラント」 |
1成分形 ウレタン |
LM | NB | ○ | 約300 | カート ペール |
ペールは季節区分2 (※通年・冬用) |
オート化学工業 「オートン イクシード」 |
1成分形 ウレタン |
LM | NB | ○ | 約200 | カート ペール |
|
オート化学工業 「オートン 超耐シーラーTF2000」 |
1成分形 ウレタン |
LM | NB | ○ | 約10 | カート ペール |
ペールは季節区分2 (※通年・冬用) |
コニシ 「ボンド変性シリコンコーク ノンブリードLM」 |
1成分形 変成シリコン |
LM | NB | ○ | 9 | カート | |
サンスター技研 「ペンギンシール 2550TypeNB」 |
1成分形 変成シリコン |
LM | NB | ○ | 10 | カート | |
サンスター技研 「ペンギンシール 2550LM」 |
1成分形 変成シリコン |
LM | × | ○ | 54 | カート | |
サンスター技研 「ペンギンシール 2570Type1-NB」 |
1成分形 変成シリコン |
LM | NB | ○ | 約400 | ペール | 季節区分4 硬化促進剤・遅延剤あり |
サンライズ 「SRシールS70」 |
1成分形 変成シリコン |
LM | NB | ○ | 約300 | カート ペール |
ペールは季節区分2 (※通年・冬用) |
サンライズ 「SRシール H100」 |
1成分形 変成 シリコン |
LM | △ | ○ | 約200 | カート ペール |
ペールは季節区分2 (※通年・冬用) |
サンライズ 「SRシール 高耐候クリアMAX」 |
1成分形 変成シリコン |
不明 | × | × | 1 | カート | |
ハマタイト(シーカ) 「SC-PS1NB」 |
1成分形 ポリサル |
LM | NB | × | 6 | カート | |
ハマタイト(シーカ) 「SC-MS2NB」 |
2成分形 変成シリコン |
LM | NB | × | 10 | ペール | |
シャープ化学工業 「シャーピー ドライサラ」 |
1成分形 変成シリコン |
LM | NB | ○ | 16+α | カート ペール |
ペールは季節区分2 (※通年・冬用) ※一定発注量以上で 特注色可能 |
シャープ化学工業 「シャーピー ヘンセイシリコーンNB-LM」 |
1成分形 変成シリコン |
LM | NB | ○ | 70+α | カート ジャンボカート ペール ウィンナー |
※一定発注量以上で 特注色可能 |
シャープ化学工業 「変成シリコーン MS1-22C」 |
1成分形 変成シリコン |
LM | × | × | 6 | カート | |
セメダイン 「POSシールLM」 |
1成分 変成シリコン |
LM | × | ○ | 43 | カート | |
セメダイン 「S700NB」 |
1成分形 ウレタン |
LM | NB | ○ | 4 | カート | |
セメダイン 「POSシール」 |
1成分形 変成シリコン |
MM | × | ○ | 10 | カート | |
東郊産業 「ハイシーラー 変成クイックNB」 |
1成分形 変成シリコン |
不明 | NB | 不明 | 2 | カート | 速乾タイプ |
東郊産業 「ハイシーラー MSシーラントNB」 |
1成分形 変成シリコン |
LM | NB | ○ | 15 | カート |
※この表は2023年5月時点のものです。
※これ以外にも多くのシーリング材があります。
住宅改修で使用される主なシーリング材については「日本シーリング材工業会」の「住宅保証機構3条確認製品一覧 」のページにて、サイディング・ALC・金属への適用の○×記載の表があり、たいへん見やすく おすすめです。
記事提出者:大吉建築塗装店
関係したメンバー:江澤塗装
編集:曽根塗装店