外壁塗装で使用する高耐候水性塗料の汚染試験

近年では高耐久と言われる塗料が多くラインナップされ、塗膜も親水性の性質をもつ親水性塗膜なるものが、主流となってきました。
親水性塗膜とは、撥水性塗膜とは対照的な性質を持っており、水を弾く撥水⇔水に馴染む親水と言う様な異なる性質を持っています。
親水性塗膜の水に馴染む性質により、付着した汚れに水が浸透、あるいは汚れとの層間に入り込みやすくなり、浮きあがった汚れを雨水で洗い流す効果があるとの事です。
セルフクリーニング効果などと言われる言い方もされています。

私自身も、塗装工事が終わっての経過観察に行った際、早い段階で雨筋ができてしまっている場合があり、ご指摘を受ける事もあります。
個人的にも美観を少しでも長く維持できたらと言う気持ちもあり、今回、各メーカーで「低汚染」ならぬ「超低汚染」というワードが使われている塗料を使用して、カーボン分散液を使用した実験を行ってみました。
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 試験体

今回は高耐久塗料と言われるグレードの塗料を4種類だけ用意しました。

日本ペイント「グランセラトップ2液水性」
エスケー化研「プレミアム無機」
シーカ・ジャパン(ダイフレックス)「スーパーセランフレックス」
アステックペイント「超低汚染リファイン1000MF-IR」

いずれも無機塗料や有機無機ハイブリッド塗料などの名称でカテゴリーされているグレードかと思います。
「超低汚染リファイン1000MF-IR」のみフッ素扱いで捉えられている場合もあるかと思います。

肌の違いで結果が変わるのか確認もしたい為、平滑塗装面とマスチック塗装面の2パターン作っています。

平滑塗装の試験板

マスチック塗装の試験板

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 レベリング性

レベリング性も見てみました。

「グランセラトップ2液水性」がレベリング性は良く感じます。それに伴い艶感も良く感じます。

シビアに順位を付けるならば、

グランセラトップ2液水性>プレミアム無機>スーパーセランフレックス>超低汚染リファイン1000MF-IR

の順番になりますが、グランセラ以外はそこまでの違いは感じられませんでした。

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 販促品での比較汚染

せっかくなので、アステックで取り扱われている「超低汚染リファイン」の「汚染比較デモキット」でも比較をしてみました。

アステック超低汚染リファイン汚染比較デモキット

カーボン懸濁液をデモキットに塗り30秒ほど乾燥させた後にウェットティッシュにてカーボン懸濁液を拭き取っていきます。

カーボン懸濁液を試験板に塗布する

カーボン懸濁液をウェットティッシュで拭き取る

カーボン懸濁液拭き取り後

上記と同じ様に、右側に比較塗料を塗り拭き取っていきました。
リファインと1種類の塗料だけ塗膜に残存せずに拭き取る事ができました。
親水性塗膜であれ水で洗い流すレベルだと落ちないので、拭き取ることで最終的な汚れの定着具合を見ましょうと言うデモキットになります。.
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 カーボンブラック

「オリオンエンジニアドカーボンズ」のFW200を使用して分散液を作っていきます。

水に分散し易く、漆黒に近いとの事で試験もし易いということです。

カーボン分散液を用いた低汚染塗料テスト

カーボン分散液を用いた低汚染塗料テスト

水1000gに対してカーボンブラック2gを添加しました。

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 カーボンブラック 平滑面

左から順にABCDとします。

カーボン分散液を用いた低汚染塗料テスト

カーボン分散液を流下させていきます。なかなか流下スピードの調整が難しく均一に流下できておりません。

開始時はDの試験体が優れているようです。

下は経過時間による汚れです。

下の文字にマウスポインタを乗せると画像が変わります
(下の文字をタップすると画像が変わります)

20分  →  40分  →  1時間  →  2時間

下は2時間後の動画になります。

実際は3分経過辺りから汚染の度合いも大差が無くなってきました。

BとCは汚染の跡が蛇行しています。真意は分かりませんが、水の流れを蛇行させる事で汚れを分散、目立ちにくくさせる効果があるとのことです。

AとDは直線的に流下していき汚染も少しずつ太くなっていく様に見受けられました。
性質的にはAとD、BとCが似た流れ方をしています。
Cが時間が経つにつれて色濃く変化していきました。

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ウェットティッシュで拭き取って汚れの定着を見ていきました。

 

AとDは目凝らさないと分からないレベルBとCは薄っすらと汚染の跡が残りました。

カーボン分散液を用いた低汚染塗料テスト

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 マスチック面

マスチック面に関しては、凸凹な形状と水平の状態で塗っている事もあり、かなりネタを乗せて塗布をしています。

マスチック面ではBとCも、さほど蛇行せず直線的な流下になっています。

10分経過…

先程と同じ様にDが優れている様です。

カーボン分散液を用いた低汚染塗料テスト

40分経過…

Dが薄っすらと汚染の跡が分かるようになってきました。

カーボン分散液を用いた低汚染塗料テスト

1時間経過…

A.B.Cともに色濃くなり、Dは他の3つと比べると比較的に薄い色合いになりました。

カーボン分散液を用いた低汚染塗料テスト

 暴露試験

波板の雨水の流下を利用する為、波板の真下に設置を行いました。

下の文字にマウスポインタを乗せると画像が変わります
(下の文字をタップすると画像が変わります)

10日間  →  1ヶ月  →  2ヶ月  →  3ヶ月

かなり早い段階で雨筋が視認された試験体がありました。
1枚だけ現段階でも雨筋ができておらず、他は少しずつ色濃くなっていっています。

シーカ・ジャパン「スーパーセランアクア」のカタログには6カ月後から汚れが落ち始めると記載があり、
「スーパーセランフレックス」も同様な性能があるのか、1年ほど追ってみます。
暴露の経過も定期的にコチラに追加させていただきます。


今回、試験を行ってみて全て汚染はしてしまうが、汚染の度合いや塗膜の性質など知らない事も多く、自分自身は為になりました。
また、カーボンブラックでの汚染と暴露での汚染では結果も変わりました。
厳密な設定も設けていない為、同じ事をしても次は違う結果になる可能性もあるかと思います。
長い目で見ていただければと思います。

また雨筋は外壁の柄や艶の有無、建物やサッシの形状など様々な要因で発生するかと思います。
塗料の選定のみで解決する事は難しいかとは思いますが、各メーカー様の汚染への性能向上も期待していければと思います。

お目通しいただき、ありがとうございました。


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記事提出者:藤嶋塗装

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